着物を着るようになってからなにが変わったかというと、簪様の髪留めが増えたことでしょうか? 着物アタマに簪、わりと重要なアイテム。新宿伊勢丹1階の髪留め屋さんで売ってるようなワイヤーでできた簪が、今のところ大ヒット中。次点は、辛子色の帯揚げみたいな色の長めのアクリル簪。
私は髪が長く、肩下15〜20センチくらいあるので(毛先は壊滅状態ですが)、着物時の髪型にはあまり困らないのではないかと自分では思います。東麻布の髪切り男子のススメに従って、前髪は切っておらず、ゆるゆるーと、くるくるーと、肩の下まで髪が流れている髪型です。
ショートボブもかわいいんだけど、一時期の桃井かおりさんや大正浪漫ちゃんのイメージが色濃すぎて、あたしの持ってる着物の趣味にはちょっと似合わない。かといって樋口カナコさんのように美しい骨格と美しい頭蓋骨にのみ許される髪型なんて、あぁー、もってのほか、もってのほか。というわけで、迷ったら伸ばしておけ!という神の啓示に従って生きています。
着物を着始めたときは、前髪を真ん中でわけていました、その他、写真もよく撮っていました(まだまだ着物が特別なものだったんですよねぇ)。これでいいかと思って歩いていましたが、撮った写真を見ると、なんだか貧乏くさい。はらはらとふりおちたような髪が、貧乏くさい。耳にかけた、クセのついた中途半端に長い髪が、貧乏くさい。私はこれでいいのかもしれんが、なんだか着物に対して失礼じゃないのか、と思うようになってきました。
買っただけで使う機会のなかったワイヤー簪を取り出し、前髪の部位を8対2、あるいは9対1でわけてみました。きちっと。きちっと。後れ毛も、ぴちっととめて、ぴしっと。しゃんと。すっきりした髪型で、ぴしっと。衿がきわだつよう、ぴしっと。うなじの中を覗いても平気よ、ここからいい匂いがするのよ、ぴしっと。虹の根元に宝物が埋まっているように、うなじの根元にはですね、フェロモンという名の兵器が埋まってるんですよ、奥さん! そんなふうにぴしっと。
あぁー、よくわかんねぇけど、外食時の接客態度が全然違うような感触を得ましたわ。後れ毛・振り分け髪ばらばらのときは、「あー、着物を御召しの女性ね」だけなんすけど、ぴしっと頭のときは、「あぁー、着物を御召しのきちんとした女性ね」というような。自意識過剰かもしれまへんが。
着物姿の女性に求められている髪型って、この「ぴしっと」感なのではないでしょうか? 着付けの初心者であればあるほど、ぴしっとした頭にしておくと、着慣れた人に見えるような気がします。
ま、それこそ着物の趣味によって違ってくるので一般論というわけではないですが、私自身の着物時のアタマはこの「ぴしっと」頭が一番よいような気がしました。そういう着物が好きだし。擬音でいうと「カッ」とした感じ。わかる? わからねぇだろうなぁ、この良さが。
2003.10.13
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