友達にS田さんという女性がいるのだが、彼女の言葉で印象的だったものは、「我流は必ず限界がくる」というものだ。言われてみればその通りで、我流は我流、自分で自分がよいというレベルまでにしか達することができないし、きちんと習っていれば遠回りせずに済む道を、艱難辛苦乗り越えて行かねばならぬ事態に陥ることもある。また、「我流」による「くずし」というのは、まっとうに一通りのことを修得してから踏み出したほうがよい道のような気がする。
着物を着るようになって一年立ちましたが、初心に帰るべく、着物の着付けの本を買ってきました。西麻布のらくやの石田節子さんが書いた「はじめてのきものの着付けと帯結び(ナツメ社)」。ナツメ社といえば、すぐパソコン関係の本や「逆引き」シリーズを思いだしますが、そういう手取り足取り系マニュアル本の手法にのっとり、着物の着方、帯・帯揚げの結び方、帯締めの締め方、着物・帯・羽織りの畳み方、季節ごとに着るべきもののマトリックス表、着物概論など、非常に丁寧に解説されている。この本を読むと、自分の我流っぷりに改めて気がつかされ、顔がちょっと赤くなるかもしれません。着物は着るだけでなく、自分で畳んだり、手入れをしなくてはいけないもの。そこらへんの裏方事情も懇切丁寧に紹介されています。初心者の人に「どれか一冊だけで着物周りのことを全部理解したい!」と質問されれば、私はこの本をお勧めしますわ。
着物を着る人は帯揚げの結び方が普通にできるものだから、わりとそこらへんを省略してしまっている本が多かったりしますが、この本はそこまできちんと教えてくれているので助かります。平たくいうと、この一年間非常にあやしげな帯揚げの結び方をしていた、ということなんですけど。
この本のよいところは、モデルさんが普通にきれいなお嬢さんであるということ。和服も似合うけど、洋服も似合うという体型と顔だちの現代ッ子がモデルなんです。ぎとぎとしたメイクでもなく、チープと際物の境界線に危うく立っているような着こなしというわけでもなく、普通のお嬢さんが、普通に街で着て歩く、普通の着物の着姿でいっぱい。リアルクローズという概念がありますが、そういう普通さ。決して、きものサロンでもなく、画報系でもなく、歌舞伎系でもなく、平凡に華やか。あ、ちなみに、石田節子さんのこの本、みなさん、白足袋派でした。ま、教則本だし。
2004.02.12
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