すみません、今日は、キモノ着てもらっちゃったりして。
いいえぇ、違うんですのよ。あたくし、今、洋服が全然ないんですの。諸般の事情がございましてね、えぇ、キモノにハマったということもあるんですけどね、と・に・か・く、洋服がないんですのよ。今、私が持ってる洋服で、人様の前に出ていけるのって、マックスマァラァのスーツとTシャツと、どれTくらいしかないんですのよ。あ、どれTってのはですね、あたいとカサイさんが協同事業で世に送りだした素敵なTシャツのことなんですけどね、それの試作品やらなにやらが数枚あるんですの。あとは、パーカーくらいしかなくって、せっかく●●さんと食事するってぇいうのに、Tシャツでくるわけにもいかないざんしょ? そんで着てきただけなんですの。全然ちぃとも特別なことじゃないんですの。気になさらないで。今日のキモノは、居酒屋仕様ですんで、タバコや料理の匂いがついても全然平気ですから、さぁ、食べましょ、食べましょ。
こうやってキモノきてるといろいろな台詞を耳にすることができるンですけどね、えぇ、ある人と何回か続けてキモノで出かけたことがあるんですのよ。そしたら、その方、「これだけキモノ姿を見ると、たいがい飽きますねぇ」って言われたんですのよ。あたし、最初はなにかのギャグかと思ったんですけど、どうもそうじゃないんですのよ。本気でそうおっしゃってるの。思ったことがすぐ口に出る人っていらっしゃるじゃぁないですか、それともちょっと違うのよね、ちょっとなにかが、ねぇ、足りないっていうかねぇ、えぇ、なにかって私の口からは言えないんですけど。
其の方、いろいろおっしゃったわねぇ。「キモノを着てる君は、ほんっとうーに」っておっしゃるの。なになに? 本当にきれいですねぇって言われるの? それともかわいいンですねぇっておっしゃるの? あたしもちょっと浮れてたんでしょうねぇ、わくわくして次の言葉を待っていたら、ソイツ、なんて言ったと思います。「胴が長いんですねぇ」って。あたし、椅子から転げ落ちるところでしたわ。それはなんですか? ネタですか? とツッコミを入れようかと思ったくらいですわ。
えぇ、なんていうのかしら、キモノ姿を特別なものだって思わないでほしいんです。まぁ、だからと言って、この方みたいに「見飽きた」なんて言っちゃぁ駄目ですけどね。あたし、本当に、ただ単に着る物がないだけなんです。洋服を買うセンスが、自分にはあまりないってことにも最近気がつきました。大柄なもんで、スーツは似合うんですけど、華奢で体が小さくて細い女の子を想定して作られた洋服は、本当に、自分には買うだけ無駄なんじゃないかって思われるんですもの。だからですね、今日、キモノきててもあんまり深い意味はないンですのよ。
あぁ、胴が長いのココロ? たぶんね、帯してますでしょ? あれが、背筋を伸ばすンですよね。それで、ちょっと低い腰かけに座った場合、猫背に慣れ切ったような人の隣に座ると、随分背が高く見えちゃうんですよ。損ですわね。ま、あれが教訓になったので、そのあとは注意するようになりましたわ。え? そういう店に洋服で行くようになったんですかって? 違いますわよ。そんなアホな男と二度とゴハン食べたりしないようになったンですわよ。えぇ、雉も鳴かずば撃たれまいってやつですワネ。
2004.03.29
|