昨年秋、御徒町の道明によりました。御徒町というよりは上野広小路か池之端か。ちょっと覗いてそのまま帰ろうかと思ったのですが、対応してくださった男性店員さんと私の間に張り詰めた空気に押されて、一本購入することに。正眼にかまえつつ向かい合って、真剣でズバッ・・・そんな雰囲気でしたもの。気の弱い私は、何も買わずに外に出ることは出来ませんでした。
さて、店内は、和の色(和って言葉、あんまり好きじゃないのですが)の美しきグラデーションで満たされております。ざっとみたところ、120色ほどありました。それが整然と引き出しに並べられ、それを見るだけで圧巻! 緑色の帯締めを探していたのだが、覚えているだけで、萌黄色、若草色、若葉色、柳色、草色、抹茶色、千歳緑、常盤緑、木賊色、鶯色・・・・などがあったと思う。色の名前はどうしてこんなに美しいのだろうと感動しながら、そしてそれを帯締めの色に再現してしまう職人の技にふるふるしてくる。日本って本当にいい国だわ。
感動してばかりもいられないし、なにか一本買って帰ると覚悟もついたので、じっくkりを色を選ぶ。帯と同化させる色にするか、反対色にするか、いろいろ悩ぶのも楽しい。その間に、いちいちツッコミを入れてくれるくだんの年配武蔵店員さんの一言がうるさいながらも的確な内容。
「そんな地味な色はよろしくありません」
「そのお色はもっと年をとってからになさい」
「あぁ、その色なら喜んでお包みしますよ」
なななな・何様?と思いながらも、彼のアドバイスに従い、萌黄色のゆるぎの帯締めを選ぶ。このやりとりをうるさく思うか、ありがたく思うかは、個人の資質によるかもしれませんね。私も少々びっくりしましたが、自分たちが売る品物に愛情と誇りを持っている企業さんってのは大好きなのです。敬意をもって、ぴしりと敬礼しながら購入させていただきますことよ。
道明につきあってくれた友達が、「ちょっとよい日にこの帯締めをおろすとよいですね」と進めてくださったので、買ってから2ヶ月ほど寝かしておき、年があけてから着物を着て新年会に出かけるときに初めて封をといた。この勿体ぶった包装のひとつひとつに老舗の矜持が感じられる。その日の帯は、開きの名古屋の漆黒緑帯。この帯の柄は大好きなんですが、どんな帯締めで締めても、どうにもなんだかすっきりしゃっきりこない。ぴしぃっと決まらないんです。
そこでこの道明の帯締めで締めました。恐ろしいほど、ピシッと決まりました。びくともしないんですよぅ。これには驚きました。
エレベーターの中でほーらこんな格好をしても、タクシーの中でほーらあんな格好をしても、本当に帯が崩れないのです。あわわー、すごーい。会場の帝国ホテルについても、あら、ホテルマンたちの目がちがうような気がするわ、えぇ、それはまったくの思い込みね、そのくらいご満悦なワタクシは足取りも軽くうきうきとした気分。
会場で、お招きしてくださった代官山マダムにご挨拶。
「あら、スガヤン、着物できてくれたの?」
「えぇ。Yさーん、これ、道明の帯締めなんですけど、すっごくよい締りなんです」
「あらぁ。私、逆に道明以外の帯締め締めたことないから、他のがどれくらい締まりが悪いのかわかんないわ」
「ぎゃふん!」
私の中の「趣味のよい真似したい大人」のチェックポイントのひとつに、「道明の帯締めしか締めた事がない」というものがひとつ加わりました。
殿方たちには、着物を着る彼女や奥様のプレゼントにするがよい、と、強く勧めたいと思います。本当に喜ばれること間違いナシよ! 道明さんはクレジットカードは扱ってないので、現金2万円くらい用意して買いに行きなさい。色で悩むと思うけど、事前に彼女にリサーチするか、くだんの観柳斉な店員さんに相談すれば、彼女の年齢にふさわしい色を進めてくれると思います。
女の子同士でお誕生日に羽織紐(六千円くらいから)をプレゼントしあうのも、素敵かもしれません。
スガヌマ、強く、つーよーく、お勧めいたします。
2005.1.19
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