与那国紀行のことを続けてがんばって書こうと思ったのですが、レベルが高すぎて・・・。あとは駆け足で旅の記録だけ淡々とつづってゆきます。
与那国の次は石垣島へ。ここで、八重山上布の織り手・新垣幸子さんの工房を覗かせてもらう。お忙しい中たっぷりと時間をとっていただき、彼女が織り上げた八重山上布のはぎれのファイルを見させていただき、手がけてこらえた上布の復元のお話などを聞かせていただく。工房は、石垣空港から車で15分くらいのところで、住宅地だけど、静かな、緑に囲まれた穏やかな場所にあった。お話の途中、壁をよじのぼるイモリの「ケケケケ」という鳴き声が何度かはさまれて、近くの学校から運動部の生徒たちの声が聞こえ、目の前には自由な色で織り上げられた数々の上布のはぎれたち・・・。今、思い返すと、ちょっと夢のような時間だった。
翌日は竹富島へ。ここで、ミンサー帯の工房を覗く。四つの四角と五つの四角で組み合わされた「いつの世までも」の意匠。男女の仲むつまじさを感じさせるおおらかな記号。こういう模様を身近に見て育ったら、自然と愛の意味を理解して、家族の絆を大事にする気持ちが自然に生まれてくるのかもしれないですね。沖縄の人は家族を大事にする人が多いと聞きますが、その根底にあるのはこの「いつの世までも」の意匠なんだと思います。
半そでのTシャツですごせた与那国、薄手のパーカーを羽織った石垣島、暴風と雨の竹富島での数時間、戻った石垣島は摂氏25度なのに風が強くて薄手のダウンを着ていた。それでも風が冷たかった。美しくて、美しくて、風が強い島々をあとにして、夜の石垣空港から那覇へ。暮らしの中から生まれたあらゆる絣の柄。生活の中に根付いているあらゆる意匠。温暖な気候ならではの自由でおおらかな染色。藍をポリバケツで仕込んでいる工房を見たときは、そのおおらかさに自然と顔がゆるんだくらい。密度の濃い、感じるものの多い贅沢な三日間でした。もう一度行きたい島が自分の心の中にできたというのは、ちょっと素敵なことだと思う。
2006.05.13
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