今年の2月、「着物を買いにいくの!」という女性につきあって、有楽町にいったのが運の尽き、当の本人より付き添いのあたしが着物にはまってしまいました。あれよあれよという間に、松屋銀座に出店していた古着屋さんで郡上(?)紬を買い、原宿のその店でその紬にあわせて絞りの帯を買い、次回に足を運んだら赤い紬とそれにあう帯と道行を買い、ちょっと飛ばしすぎたと反省したのもつかの間、呉服屋さんの反物市でいっちょう桃色の紬を誂え、神楽坂で辻が花の帯を買い、ネットの各種着物サイトの充実っぷりに圧倒され、オンラインショッピングもした、古着屋もまわった、下駄も揃えた、三越でも買ってみた、と怒濤の二ヶ月を過ごしてみた。幸いお友だちマダムは着物歴十数年のベテランさま、よく洋服屋さんで服の取り合いもする間柄、着物の趣味も近かろう、なにかあったら彼女に教えを請うのがよかろうとはまってみました着物道2003。
この前の土曜。その郡上紬に辻が花の帯で、気温25度の新宿を歩いてみた。
伊勢丹タンで着物用の鞄を買い、ふらりと三越によってみて、ティファニーをひやかしてみた。着物を着るようになると、着物の袖からのびる腕を断ち切るような存在感の有るベルトの腕時計がしたくなくなってくる。細いベルトのものか懐中時計か、それとも携帯電話の時計で済ますかなどと考えているとき、時計の売場で足が止まる。ティファニーの時計の艶消しの美しさに見とれていたら、年輩の男性店員さんが。
「すてきなお着物ですね」
「あーうー。ありがとうございます」
「この春の新作なんですが、こちらの時計が奥様に似合うかと思います」
奥様? 新作? それはあたいに向かってしゃべってらっしゃるのですか?
「その指輪も素敵ですね、どうですか? この時計とその指輪も似合うと思いますよ」
あれよあれよという間に私の左腕に、黒いシルクのベルトでできた、文字盤のまわりを上品にダイヤでかこんでいる時計がはめられた。あぁっ、まぶしくって何時かわかりません。そのときの気分はもう戦争、じゃなくて、悩める人妻とにじりよる紳士ですよ(よくわかりません)。以下はイメージ図。
着物を着てるとそういう愉快な出来事が少なからず起きるのですが、これを自分一人で楽しむのはもったいないと、はじめてみました着物道2003。どこまで書き続けるかわからないけど、まー、気長に楽しんでみてください。
2003.4.29
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