5月最後の土曜日、6月最初の日曜日を、今年は鎌倉の人妻ちゃん家の別宅で過ごさせてもらった。あぁ、海よ! 台風よ、横須賀線よ、江ノ島電鉄よ! そしてビールよ!
それはさておき、鎌倉というのは風情がある街ですな。情緒があるし、海の近くは、人間らしい暮らしをしている気にさせるのではないでしょうか。海の青と小高い山の緑が同時に目にはいってくる。目に美しく、過ごしやすい街です。
そんな鎌倉で、人妻ちゃんと古着屋巡りを敢行。鎌倉駅前と、長谷観音近くの2軒をまわりましたが、どちらも、レベルが非常に高い。織物系で、そして趣味性があんまり高くない、汎用性の高く、質もひじょうによい古着がめじろ押し。ほほほ、めじろ押しに私を攻めようったってそうはいきませんことよ、と袖を通してみると、腰の力が抜ける程、私の丈、裄ともぴったりあってしまうものがいくつかあって、選考に悩む。2日かかりで選択に悩んだものは、以下のもの。
藍色の小紋 |
(値段)
1コマロ
(着る時期)
6月-盛夏-9月中旬
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こちらは、品のよい藍色に、紅型が散らしてある駒絽。若奥様風ですね。若奥様風だから、あわてて買わなくてもいいかなと。
ちなみに絽とは、生地に絽目といって縦や横に隙間があるもので、涼し気に見えるのだよ。 |
男前大島の袷 |
3.8コマロ
10月〜5月末 |
夢にまででてきそうなおっとこ前な男物の大島を、袷に仕立てあげたもの。大島のなにがすごいって、実物を触らないとわからなりんですが、あの生地のつるっつる感。さらさらというか、つるつるというか、下手に軟弱な液体なんざぁ受け付けませんよ(実際はどうかわかりませんが)。
あと、大島といったら奄美大島で、三原山があるほうではありません。 |
夏塩沢の単 |
2.2コマロ
6月・9月
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夏塩沢とは、樋口可南子さんによく似合いそうな、白くて凛とした、しゃり感のある絹織物。塩沢紬の産地は、新潟県魚沼郡、お米のおいしいところですね。こういう織物の技術ってどんどん廃れていってるんだろうな。超のつく貴重品になるまえに、なんとかしないと大変なことになりますな。 |
夏大島1 |
6.6コマロ
盛夏 |
亀甲柄の夏大島。これはとてもものがいいということが素人の私にもわかるもの。つまり、ものが良すぎ。ちょっとそんじゃそこらの自営業が着るには、かなり立派すぎ。嫌味な人だったら「お気張りやしたなぁ」と揶揄しかねんくらい立派。これを買ったら一生ものだとはおもったが・・・・。 |
夏大島2 |
4.7コマロ
盛夏 |
これは、姐さん粋だね、江戸ッ子だねぇ(長野出身ですが)といわれるために存在するような着物。なにはともあれ男前、珊瑚のかんざしがよく似合う紺色の夏大島。これも、自分で誂えたたらとんでもない値段になるというもの。 |
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恐るべし鎌倉マダム! その理由とは、以上5点がすべて裄も丈も私にあっていたことなんです。もしかしたら双児の姉がいるのかしら、ほら、子どもの頃、地下牢につながれていたしぃ、あたい、というくらい私の体型にぴったり。しかもこれだけ、織物も柄も趣味も、上質なものってなかなか出会えないんですけど。
さんざん悩んだあげく、買ったのは、『夏大島2』。買って数日経過していますが、実は今でも男大島の袷が頭の中でゆらゆらしてます。あぁん、ゆらゆら。
真夏にしか着られない夏大島です。なんと贅沢な織物なんでしょうか!! こういうココロの豊かさというか、シャニェルの2003年型ワンピース38万とか、ギュッチの2003年型ワンピース27万とかにくらべたら、喜びタイムがはるかに持続します。なにしろ型の流行がありませんし。
この着物を買ったあと、お店のマダムが「これはね、一生着られるよい着物なの。大事にしてね」と声をかけてくれた。なぜか胸が熱くなった。きますよ、着ますとも! 大事にしますとも!
なお、今朝、都営浅草線で、紺の紬に博多帯をしめているひとを見かけましたので、そのイメージで描いてみました。頭には当然、珊瑚の簪。なんとかのお竜ですね、スリの銀次の愛人というか。
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