着物道2003-2005 麻布十番1997-2005 ヒグマニア
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「ちどり」という着物屋さんを始めました。

古い順から並んでます
序章
たすきをかける
古着と新品
資産運用2003
母の気概
洗える着物
日本橋三越で
暴力着付け
きものについての本
夏がくる
それは便利か
蕪村 1
子規 1
子規 2
和服の下着
鎌倉に地雷あり
メンチきります
麻布十番にて長年
勉強をする
目指すところ
開襟シャツの男
幸田文「きもの」
意地と人情秤にかけりゃ
下駄遍歴
母の気概2
「箪笥の引き出し」
恐るべし夏大島
雑記帳
着物アタマ
鼻息ふんふん!
はじめての冬支度
亭主の好きな長羽織
名古屋の秘密
防寒中
全ての道楽者に捧ぐ
着物の本再び
白タビーズ
柄タビーズ
暴力着付けのツケ
男とキモノ-雉編-
和装の下着再び
髪留め列伝
お直し戦線異状なし!
夏キモノチャート
拝啓、諸先輩方
東京百貨店考
朝顔市・ほおずき市
竺仙の長板中形
浴衣雑感
浴衣道場
久米島紬・米沢紬
靖子の背中 武家文庫
久米島米沢再び
「きもの随想」
迷走台風泥酔紀行
ほれたはれたの綿薩摩
当世殿方持ち物事情
開けるな キケン!
二回目の冬
当世殿方持ち物事情2
道明の帯締め
冬の小物
奄美紀行1 移動編
奄美紀行2 観光編
和装ブラ ついに!
奄美紀行3 購入編
奄美紀行4 大島紬編
奄美紀行5 最終章
着物情報 おさらい
野球の季節
八丈紀行1 八丈編
八丈紀行2 路傍編
八丈紀行3 驚愕編
八丈紀行4 飲酒編
八丈紀行5 観光編
琉球泥酔布紀行
与那国紀行1 南へ
与那国紀行2 西へ
与那国紀行3 島の
与那国紀行4
ハレの着物、ケのお顔

タイトル

女学生になったというのは、こうも面倒くさいものなのか、とるつ子は溜息をついた。おばあさんが全くうるさいのだったし、一方学校でも目新しいことにぶつかった。
おばあさんは学校着と、うちで着るきものとを区別させた。必ず着かえろ、という。脱いだものは、必ず畳め、という。衣文竹につるしておくのは、柳原みたいだ、と嫌がった。柳原とは町の名で、軒並に古着をつるして売っているという。第一、たたみ付けない着物は、肩山袖山の折り目が崩れて、見苦しい。ぴたりといい気持ちに着ようというなら、畳みつけることから覚えなくてはいけない、という。るつ子は面倒くさくて、音をあげた。するとおばあさんは、ちょっとの辛抱だから覚えといておくれ、と下手に出てたのむ。
着物はいきなり、所かまわずに、ぱあっと脱ぎ散らすものじゃない。引き伸しござか、衣装畳紙かの上で、膝をついて、身から放した順に片寄せながら脱いで行き、これとそれとを換える時は、片肩片肩ずつ滑らせれば、裸をさらすような下司な形にはならない、と教える。るつ子には、それは手品のようなむずかしさである。
「なぜそんなむずかしいことしなくちゃいけないの。立っていてぱっと脱げば、簡単だし、さっぱりしていて気持いいのに。」
「そう、そのほうが簡単で、さっぱりしているだろうよ。一生、ぱぁっと裸に脱いで、またぱあっと裸へぶっかぶる、といった着かたをしていてもいいだものね。ただまぁ、簡単なことしか知らないのと、多少は形よくすることも知っていた上で、簡単にしているのとでは、ちっとは違いもあろうというものさ。おまえさんもこの先、どんな着物をきる人になるんだか、ずっしりしたいいものを着るときを考えてごらん。おかしくないかい、髪もできてる、化粧もしてある、それでぱあっと裸かい。しながよくないねえ。」
「誰も見ていないところで着かえりゃいい。」
「そうだね。でも誰がいてもいなくても、半肩はふだん着、半肩はよそいき、二枚の着物を両方の肩へかけた気持ちは、そりゃ裸が簡単でいいという人にはわかりっこないね。(後略)」

至言だ。(2003.06.17)

「そうかね、若いものは考えることが得手だっていうけれど、るつ子がそんな間抜けな返事をするとは意外だね。横縞、横段というものがどういうものか、考えたことがないのかねぇ。考えるまでもない、鏡を見ればわかるだろうに。」
「へえぇ、横縞がどうしたのかしら。」
「裸の格好がよくわかるものだと思わないかね。肉付きがはっきり出やしないかね。」
縞はものさしみたいなものだ、とおばあさんはいった。(2003.06.19)

KIMONO MICHI −キモノミチ−着物道−きものみち−2003-2005