春めいてきた陽気の今日此の頃、昼下がりの新宿伊勢丹に行って帰ってきたところ、ちょっと汗をかいたもんだから部屋につくなりするりと着物を脱いだのですよ。伊勢丹では、着物の染み抜きをしてもらったばかり。今脱いだ結城(もちろん本結城などではありません)の裾まわりや、袖口、襟のところをまじまじと見てみた。
ぎゃわわー!!! 人間の体というものはこれほどまでに皮脂がにじみ出ているものなのでしょうか? こんなに(というほどひどくはないですが、自分の予想をちょっと上回る程度)汚れているなんて! あわててパソコンに向かい、いろいろな情報を調べてみる。みなさん、どうやって手入れしてるんでしょうか? ほとんどの方は、「帰ってきたら着物を脱いで、気になるところはベンジンでたたくようにして拭いて」とやっておられるようです。 えぇー、ベンジンって、あの揮発性のすっごく高い、あけた瞬間からさわさわーって気化しちゃうあの液体でしょ? あれを本当に使っているの? それで汗のシミが本当にとれるの? 着物をいためたりしない? 母はどうやっていたのでしょうか。あぁ!!! いろいろ読んでいるうちに、旅から旅さんのページに辿り着き、「ベンジンなんかつかったらあきまへんでー」というようなことを書いていらっしゃる。 私は、この方から、ある夏の日、「夏大島を買った喜びがよくわかります」というメールを頂戴してまして、この方のいうことは無条件にきいてしまうクセがついておりまして、ベンジンが急に信用できなくなってしまいました。 はーっと、ため息ついてから、結局、近所の悉皆屋さんに丸洗いに出すことにしました。6000円だそうです。で、この値段が高いかどうかというと、どうやら高いみたいです。まぁ場所が場所だからなー。
この一連の皮脂事件で思ったのですが、私は、このところ、着物を着ることになれすぎていたのだということに気がつきました。着物を着始めた頃は、なるべく汚さないようにと、着る前には手首のまわりとうなじをおしぼりで拭き、少しでも『よごれる可能性』を少なくしていたもんです。そういう注意の積み重ねをなまけておりました。ま、洋服だって季節がくればクリーニングに出すわけだし、それと同じといえば同じ。丸洗いに出すタイミングは、着るごとではなく、季節の変わり目くらいでしょうか。確かにブラウスほど気軽に洗えませんが、そんなにもともと汚れるものでもないので(皮脂ばっかりはしたかないが)、構えて着ることはないと思いますが、まー、あたしゃ構えなさ過ぎ。大袈裟にいうと、うつくしいものに対しての敬意を忘れておりました。
袖口の汚れは、襦袢の裄が十分にないからかしら、とも思ったり。身の丈にあった着物というものは本当に大事なんだと、教訓を得ました。 2004.03.03
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