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キモノまわりのものやキモノ本体をどこで買うかというと、古着屋と百貨店がそれぞれ4割、街の気さくな呉服屋が2割、立派な呉服屋はいまだ経験しておらずのあたくしです。店内に足を踏み入れた瞬間、立派な袋帯を執拗にすすめるような立派な呉服屋さんは、怖くってまだ行けません。その点、百貨店はいいわよね。種類は豊富だし、小物からキモノまで一式揃うし、買わなかったからといって二度と足を踏み入れられなくなっちゃうってこともない。
その百貨店ですが。 新宿伊勢丹と日本橋三越のふたつが私の両横綱。 新宿伊勢丹は、若い人から趣味性の高いキモノを愛する人まで幅広くカバーしてくれてます。自分で好きなキモノを選ぶことができる人向きの百貨店といえなくもないでしょう。
対して日本橋三越、ここの広い広い呉服売場には、生きる階層が最初から最後まで違う正統派おかねもちのみなさまから、奥様やoLさんのお小遣いの範囲で買えるものまでいろいろございます。洗えるキモノ売場にあるのは東レシルックなどの奥様向け小紋が多く、同じ洗える着物でも撫松庵のものが数多く揃っている伊勢丹とは明らかに趣味が違います。売場はエレベーターで降りて向かって右手奥から、車一台くらいのお値段の振袖、七五三むき、ならいごと奥様たち向きの小紋など、ちょっと高めの訪問着や付け下げ、売場真ん中あたりでお買得なものが展開、あるいは今この季節なら都内百貨店でいまだみたことのない量の浴衣がごっちゃり、その奥・エスカレータ寄りで小物一式、そして奥に、40〜100万くらいの大島やら今なら上布、作家もの訪問着がずらずらーっと並んでいる。この高級呉服売場にいる男性店員さんたちは、着ているスーツもひとクラス違うような織りのよいものを着てらっしゃる。この品揃えを見て、さすがは天晴れ、日本橋は三越よ、むむぅーと、行くたびに感心する。
さて、その日本橋三越に、浴衣を見に行った。お目当ての大きな立涌の浴衣を探しに行ったのだが、はたしてそれはあった。濃い灰色の絹芭蕉を着た店員さんが羽織らせてくれる。その浴衣の身丈163センチ、身長168センチの私にはちょっと小さいが、夏の夜に着るものだからこれでもいいかな? なんとかなるかな?、とお勘定場まで行こうとしたとき、彼女が「できたら反物も見ていってもらいたいの」と声をかけてくる。「この浴衣も素敵なんだけど、あなたには気持ち小さいから、好きな反物を選んで仕立ててみたらどうかしら?」と。あぁ、わしづかみにされましたよ、店員さんトークの術中にはまったと言ってもいいね。もっとも、浴衣の仕立て代は着物ほど高くはないであろうと踏んでいたので、ここで術中にはまったとしても仕立て上がりの浴衣を買うのとそんなに値段は変わらないであろうこともなんとなくわかっていたので、のこのこと反物売場へ。眼は迷わず竺仙さんの反物を探しに行く。
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日本橋三越/浴衣お仕立て料金 |
仕立て代
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10,000 |
居敷あて |
1,000 |
合計 |
11,000 |
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「あなたに似合うのはこれよ」と反物をニ巻取り出す。ひとつは綿の紺地に大きな菊、もひとつは綿絽の紺地に大きな百合。さすがは三越の呉服売場よ、
客の好み(とプライド)をくすぐるのがうまいっ。菊の反物は菊の花の白い地の割合が多かったのでやめて、百合の反物を選ぶ。
お仕立ては10日〜14日。 居敷あてをつけても、お仕立て代は11000円
で、反物の値段を入れても先に羽織った縞の浴衣と大きく変わらない値段になりました。よかった!
しかし、ここの店員さんたちのものを売るのがうまいこと。絶妙なタイミングで、購入意欲をかきたててくれるメッセージを送ってくる。そして、おせっかいというわけでもなく、
なんとなく黙っていうことをききたくなるような喋り方。「そうですよね、姐さん方、プロですもんね。わたしなんかよりはるかに着物歴が長いんですものね。えぇ、間違いないっすよね」と素直にうなづきたくなる力がある。そして、売り手の趣味を強く押し付けてないような気がする。『あんた、こんだけ売場のもん羽織ったんだから買うまで帰さないわよぅー、ゴゴゴゴゴ』というギトギトしたオーラもない。安心してお買い物ができるなー、と。ま、今回のお買い物の対象である反物がそう高くない浴衣地だったから、というのもありますが。うーん、これから浴衣を買おうと思っている方、試しに日本橋三越に行くがよいですよ。老舗の矜持を味わってくるがよいですよ。
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布を扱うお客さんのところで、新商品を拝見させていただく。その布は、ちょうど半幅帯の幅で、かたちは反物のように筒を芯にしている。素材は手触りのよい木綿で、会議の間30分ほど、至福の顔で抱き締めさせていただきました。同年代のお客さんの看破っぷりに愉悦! |
2004.07.06
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