おぃっす! おぃーっす!
道場やぶりにきましたーっ。どうじょこちらですー。おぃーっす!
というわけで、本日は、浴衣道場を開催させていただきます。今、きもの業界は空前の浴衣の長期ブームのまっただ中にあるそうで、ここ5年ほどずっと売れつづけているんだそうです。確かに、襦袢を着る着物と違って一枚で着られるうえ、お値段も手ごろで、花火大会・夏祭りなどで連れの男子のハートをぎゅっとぷち掴みするにももってこいのコスプレアイテム、人気が出るのもわかります。そう、コスプレアイテム。あえて、コスプレアイテムと明記いたします。あぁっ、あなたたち、かわいい浴衣をかわいらしく着ていて、そういう姿勢はとってもいじらしくってかわいいのに、フェロモン弁をふさいでる限り、それはコスプレの域を出ないわよぅ、とあたくしは断言します。
かわいい子もきれいな子もそうでない子も、太っている子も細い子も中肉な子も、背が高い子も低いこも中ぐらいな子も、誰でも、特別手入れしてなくても、それをちらりと見せるだけで、殿方のココロがなんだかざわざわする素敵な武器を、女性はみんな持っています。それはなにかといいますと、うなじです。項、うーなーじー。
髪をつっとあげた襟足、うなじから背中にかけての白く内側から輝くような肌、ちょっと産毛が生えててもそれはそれでなんだかエロくてちょいとすてきなうなじ。藤沢周平や池波正太郎の時代小説を読んでいると、その時代の着物姿におけるエロ表現としてよく登場するのは、うなじまわりが非常に多い。おそらく、黒髪と白い肌の対比、そして、年相応に抜いた襟から覗くその白さがぐっとくるらしいのだと思われます。
さて、翻って、現代の夏祭り会場で浴衣姉さんや浴衣ギャルちゃんをさんざん見ました。いろいろ言いたいことはあるのだけど、ひとつだけ言わせておくれ。
「襟を抜け! もっと襟を抜いておくれ!」
襟を抜かない浴衣姿は、まるで、スーツのジャケットを羽織ったままの後ろ姿のよう。おろしたての浴衣の折り皺がぴっと垂直に立ち、それがまた上着っぽく見えてしまう。もひとついえば、柔道着の後ろ姿にも似てる。
だいたい暑くはないのかえ? 襟足に浴衣の襟がぴったりとくっついてるのを見ると、なんてもったいないんだろう、どうしてフェロモン弁を開いておかないんだろう、と地団駄を踏んでしまいます。えぇ、これがお直しおばさんの第一歩なんでしょうねぇ。
襟を抜くのなんざ簡単です。浴衣を着て腰ひもを締めたあと、背中に手をまわし、お端折の背中心をくいっと引っ張る。そっと引っ張る。あんまり襟を抜きすぎると、たまに前側の胸元も開きすぎて、ひと仕事が終わったあとのお女郎さんみたいに見えてしまうので注意。そういう姿を粋だと思ってみる人は、世の中にはそんなにいない。鏡に対して横に向いて、襟がちょっと背中側に開いたように見えれば、後ろ姿としては「ちょっとだけ開いたかな?」程度で、ま、よいでしょう。
浴衣を着ている間、お手洗いにいったら、鏡に自分の後ろ姿を写し、だらしなくなってないか、帯はくずれてないかチェック。胸元が開きすぎていたら、身八つ口から手を入れて調整。これでぐっと浴衣美人になると思います。少なくとも、「直したい、直したい、あぁ、その姿を直させてちょうだいぃー」とぶつぶつ囁きながら、あなたの背後に立つハンケチ握りしめた女が、確実に一人減ることでしょう。
くどいようですが、もう一つ。「着くずす」と「着くずれた」は、全然別のもの。和服姿がだらしなく見えるのは、着方云々よりも姿勢や歩き方に問題があることがほとんどだと思います。えらそうですみません。私の着物姿の現物を見たらきっとつっこみたいこと満載だと思うのですが、浴衣嬢ちゃんたちが増殖する夏場、襟の抜き方と姿勢ひとつで見違える姿になると思いますので、どうぞよろしくご検討ください。
さて、浴衣道場第二部−男子の部。
男の帯は、ベルトじゃねぇんだから、ウェストの高い位置で結ぶのはやめろーっ。
第二部終了! 以上!
2004.08.15
|