着物をはじめるなら春先がいいと思うのです。なぜって着物だけで歩くことができるんですもの。羽織やらコートやら道行やらを用意しなくてもいいし、どうしても帯出し(帯のまんまで、上になにも羽織らず歩くこと)がいやだったら、ストール一枚で格好がつく。ついでに陽気もいい。「うわぁ、着物って汗かくんだぁ」と思っても、なんのなんの、単の時期にはもっと暑く感じるし、真夏にはしゃれにならない思いを味わえる。本当に、春の着物デビューはいい。それから一年めぐる季節の中で、ひとつずつ、少しずつ揃えていくことができるのだから。
そうやって私の着物季節が一年めぐりましたが、防寒問題再び。
私は、着物を着るときあまり真面目に下着をつけないもので、洋風上下分割下着、あるいは、その上にぴったりした厚手のキャミソールを着てその上に襦袢という姿で、着物を着てしまうことが多い。帯の下で着物が汗をすってしまうからこれはあんまり進められない着方です。
冬になると、上下分割下着→着物用の下着→正絹の裾除け→襦袢の順で着るようになる。真冬になると、時と場合と会う人によっては、赤外線なんたらシャツや、ストッキングかタイツ、ニーハイの靴下などを追加してゆく。ここらへんはまったくの自己流なので、人によっては笑われちゃうんだろうな、と、実は気が付いてはいます。
そんな私でも、正絹の裾除けをつけるときはいつも思う、「襦袢はまだポリでもいい、いいんですよ、ぼかぁ! だけどね、裾除けだけは正絹のものにしておいたほうがいい」と。
まずあたたかい。裾さばきが快適になるうえ、静電気パチパチ問題を防ぐことができる。もう一回いうけどあたたかい、ふっくらとエアインとなった空気の中で、脚が温かく感じられる。また着物を着ていて、案外汚れるのは裾まわりで、それは上に着ている着物だけでなく、襦袢のすねのあたりも結構埃を吸うみたい。それはポリだとなおさらのこと。それらの問題を防ぐためにも、裾除けだけは正絹の裾除けを是非。松屋銀座や日本橋三越のきもの市かなんかで、小物売り場、下着売り場の中で、正絹の裾除けは5000円くらいで買うことができる。「着物が欲しい、帯が欲しい、だけど襦袢までは手がまわらなくて」という方こそ、是非。
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先日結成されたチーム久米島ーズ。どうして私って写真撮るとき一歩体が奥にひいちゃうんだろう。撮影:青山ゑり華さん。 |
ついでに上っ張り問題。
はしっこにてんてんとロシアンセーブルの毛がふさふさついたカシミヤの大判マントを、羽織の上に、あるいは道行の上に羽織っておりました。
しかし、しかしですな、はしっこにてんてんとたとえファーがついていたところで、脇や足元から刺すようにはいってくる寒気には勝てやしないのです。着物用のコートなんて買わないもん!と昨年は思っていたものですが、一冬越してみて、いやそれは買ってもいいのかも、と2月の頭くらいには思うようになりました。だって、だって、だって、脇がすーすーするんですもの!
で、今年はとうとう別珍のコートでも買おうかと思っています。思っていながら、カシミヤの着物用のコートに都内某所でうっかり出あっちまう。これがまたすこぶる格好いい、格好いいのだが・・・・重い・・・、すこぶる重い。マックスマーラーのロングコートは決して軽くないという動かしがたい事実と同様、重い。
着尺1本分身にまとって、さらに帯でお太鼓背負って、さらにさらにカシミヤのコート、長時間この格好でいたら、正直、私は腰をゆわしてしまうやもしれませんです。
そんなわけで上っ張り問題は少々保留中。襟元の寒さはファーのマフラーでどうにかなる、袖の寒さは手袋でどうにかなる、足元の寒さは靴下次第でどうにかなる、そうやって小物ひとつひとつで防御していくのか、いっそのこと脇も閉まったコートで颯爽と歩くのか。小物はかわいいのだけど、喫茶店などに入ったときいちいちひとつずつをはずし、椅子やら鞄にかけておくのが面倒だ。コートは身軽になるのだけど、出かけるたんびに表情がおんなじになってしまい、そこがつまらない。所詮東京の厳寒期なんざ1月の中ごろから2月の終わりまでの6週間、我慢しきれないこともない。だいたい地下鉄に乗っちまえば都心の移動なんてすぐだ。真夜中に「酒ー、酒を飲ませろー」と夜道を歩いて移動でもしない限り、別段問題はないんじゃないのか?
なんてぇ考え出すと、いつまで経ってもその一枚を箪笥に加えることができないです。そこのあなた、小物派? コート派? みなさま、どうされてますのん?
2004.11.22
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