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「ちどり」という着物屋さんを始めました。

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ハレの着物、ケのお顔

一枚目の着物も、二枚目の着物も、三枚目の着物も、すべて古着屋さんで買った。壱万円、八万円、壱万円の順。
洋服だったら古着はあまり興味がないが、着物の場合は、洋服ほど前の持ち主が着ていないであろうから、買うのにあまり抵抗がない。おそらく趣味じゃないものを呉服屋さんとのつきあいで誂えたのか、わりと顔がある(と、着物初心者の私が思う)着物が流通してる、特にわたしの身長の場合は。

古着屋で買うということ、それは誰かが袖を通したとかそういった話の前に、お仕立て上がりのものを買うということ。着物は身丈、裄(袖の長さ)、袖の三つのサイズにあわせて着るもの。身長155〜160センチの人は、古着屋さんにいってもまず問題ないと思いますが、身長168センチだとまず身丈で選択肢がぐっと狭くなる。裄もぎりぎりめいっぱいに長いものがいい。
まずサイズありき。その視点で見ていくと、なかなか合うものがない。またそういう背の高い女たちは、「お客さま、お背がありますから大きい柄が本当に似合いますわ」とすすめられているのだろう。最初に買った3枚のうち2枚は、過去に店員さんが、その台詞を必ず口にしたであろう大きな柄のもの。
なので、『古着屋でサイズがあった、わーい、しかし柄がアレなの」という出会いが多い。店員さんも、柄もわたしの趣味も(まだないけど)よく考えずに、まず丈のあうものをバンバン探し出してきてくれるようになる。「サイズがあえば、その理由だけで、この子は買うでしょ!」てな感じに。
しかし、私も「他の人が持って無さそうなもの」というのは大好きだから、南極と北極ほど趣味があわないってわけでもない。つんつるてんの着物を買うよりよっぽどいい。

また、そんなに裕福というわけでもないから、新品をぽんぽん買うわけにもいかない、そういう経済的な意味からも古着屋さんは便利。とても便利。自分の趣味とサイズにあうものに出会うことができれば、とても便利。しかもお仕立てあがり、買ったあとにすぐ着られる。

しかし、着丈はなんとかなるとして、裄については毎回妥協しながら買っている。そして、古着は古着。年数を経た分だけの生地の傷みもあるものもある。どんなに素敵なものでも、誰かの趣味で、誰かのためにあつらえられたもの。『そう、前の奥さんが忘れられないのね、あなた・・・・』と人さし指で自分の男の背中をなでたくなるような気持ちになる、それが古着屋さんで買った古着。

そんな私を、人妻さんが「反物が安くなっているから」と、青山プラースの脇にある、えり華というこぢんまりした加賀友禅のお店に連れていってくれた。えぇーっと反物だけで250万近い国宝級作家さんのものがあったりするんですけど、まぁそれはさておき、反物が一律30000円。趣味にあった女らしい柔らかい色の、桜のつぼみが開く直前の色で織りあげたような紬を見つけ、「ママ、これを買うの! あたいはこれを買うの!」と一気にハイテンションロードへ。千代紙人形みたいに反物を体に巻き付け、顔にもよく映える色、四十になっても五十になっても着られるでしょうと買うことに。

さて、そこで採寸が始まりまして、丈はいくらで裄はこれであぁだこうだと調べていただいき、「八掛(はっかけ/着物の袖口や裾の裏に付ける布地、「裾まわし」のこと)はどうされます? 胴裏(どううら/着物の裏地のこと)は?」と店員さんが。はっかけ? どううら? 食えるの? 喰っていいの?状態で、続いて八掛と胴裏の生地見本が出され、これじゃ野暮だ、これは派手だ、これはくすむと見させてもらった上で色を決めて、ようやくご会計の段に。

反物 30,000

仕立て代

30,000
八掛 8,000
胴裏 10,000
合計 78,000

細かい数字はちょっと違うかもしれないけど、だいたいこんな金額でした。

お支払いの段になってのわたしの率直な感想。

 1.これだけ手間をかけて一枚ができるわけだ。
 2.古着を買うということは、これらの工程をさっぱりと短縮するということなんだ。
 3.この自分だけのものという快感は一体なんなんだっ!

そして一ヶ月待って仕立てあがりを受け取って、その新しいものがもつ布地のさわやかさに、まずココロを打たれました。そして羽織ってみて、ぴったりとあう裄と丈が着心地よく、自分だけのこの一枚の居心地のよさといったら! なにより、自分が選んだ反物が、着物の形になってひらひらとやってきたわけですよ(デビッドカードで支払ってはいますが)。あたいのガラスの靴はここにあったのねぇと、目がうっとりしてしまうのですよ(自分の銀行口座から引き落とされているわけですが)。

こんなのあぁた自分の旦那さんに買ってもらったりしなさいよー! 「おい、おまえ、そろそろ誕生日だったなぁ」とか言われたりしたその次の日呉服屋さんから電話がかかってきたりしたら、もー、高島礼子みたいにお燗をつけて旦那様の帰りを待つようになっちゃうわよー。

古着屋さんには古着屋さんの良さがある。失敗したって、ブラウス一枚より安いこともある。そういうさばさばした感覚でつきあうのもいいと思う。面白い柄のものに出会えるし、なにより気楽。

そう古着は買うのも気楽、着るのも気楽。

その仕立てあがった着物ですが、汚すのが怖くてあんまり遠出してません。あぁ、根が貧乏性だとどうしようもないなぁ。。あーぁ。

2003.05.01

KIMONO MICHI −キモノミチ−着物道−きものみち−2003-2005