八丈紀行その4 島タクシー+島居酒屋編など
荒波を存分に堪能した後、来た道を上りバス通りへ出る。行きの心細い時間が長くついた下り坂に比べ、帰り道のなんと早いことか。あのデブ猫さんにはもう会えなかったけれど、車が通る道へ出たときのほっとした気持ちをなんと表現したらよいか。。。
伊勢崎商店前というバス停でタクシーを呼ぶ。お願いした車は5分もしないうちにやってきて、私たちは、ほんとうに、ほんとうにほっとした気持ちで乗り込む。そしてこの車内でも、やはり、「なにしにきなさったの?」と質問される。海の強い風にさらされていた私たちは、うみゃうみゃと答えをごまかす気力もなく、「黄八丈を買いに来たんです」と素直に答える。タクシーの運転手さんの答えを、言ったとおりにここに書きます。彼は苦笑いしながらこういいました、
「黄八丈はねぇ、横からかすめとるなんてことはできないですよ」
と。この方、別に悪気があっていったわけではないのです。車中でそこらへんの事情をいろいろと詳しく聞かせてもらったのですが、この島の織物は本当に人気が高く、都内・京都をはじめ各地の呉服屋から何本分も予約が入っているそうです。数年分の作業を束縛するような予約なんだそうです(ちょっとオーバーかしら?)。なので、一本織りあがったからといって織り手さんは息つく暇もなく、次の織物にとりかかるわけです。ふらっときた旅人が趣味性の高い織物をちょろっと買い求めるなんてことはできないのです。
うーん、そこで私は思い出すわけです。いろいろなゴタゴタがあったとはいえ、地元の組合が総力あげて作ったゆいまーる館で久米島紬のB反を売っていた久米島、あるいは、街のいたるところに大島紬の専門店がある奄美大島とはまったく違い、ここは大人の事情というものが君臨している土地でした。
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それはさておきこの運転手さんも大変親切な方で、大坂トンネルの手前のベストロケーションで、沈む夕日と八丈小島の写真を撮るために、わざわざ停車していただき、さらにメーターまで下ろしてもらっちゃって・・・・わたくし、これでも各地に旅してきたつもりですが、タクシーの運転手さんにこんなに親切にしてもらったこたぁありませんですよ!八丈島は本当によか島ですよっ!
宿についた私たちは、通りはさんだ向かいの民芸のやましたで、着尺プレイをさせていただきました。説明しよう! 着尺プレイとは、着尺を襟元にあてて「あらぁ、似合うわぁ」「アンナさんこそ、それお似合いよぅ」「いやぁん、あなたこそこれ買いなさいよぅ」と、お互いになにかしらお買い物をさせようとするプレイです。気のやさしい店主の山下さん(という名前に違いない)にいろいろと織り元さんならではのお話を聞かせていただき、なんにも買わず(ごめんなさい!)、その後夕飯を食べに行きました。えぇ、昼間のタクシーの運転手さんにすすめていただいた梁山泊という居酒屋です。
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こ・こ・ここはすばらしい…本当にすばらしい…。
値段は都内プライスだけど、ボリュームは1.5倍、そして料理がめっさうまい。ここではトビウオのたたきをいただきました。わたくし、トビウオのたたきは初めていただいたのですが、トビウオのぬらぬらっとした食感に、ピリリと島の青唐辛子がからめてあって、くっはー、ビールが進む! そのほか印象的だったのは、島ネギのふわふわオムレツ(島ネギの旬は春! メニューにあったらまず食べてみて!)、パッションフルーツのアイスクリーム(パッションフルーツの味そのもののアイスクリーム、ほかの場所で食べることはまずできんじゃろう)、地元の焼酎・黒潮(地元の方は「黒潮は癖が強い」とおっしゃいますが、黒糖焼酎好きの私が一番はまったのはこの焼酎です)などなど、あぁっ、もうっ、もう一度行きたい・・・。旅の楽しみと幸せは、現地の「よい居酒屋」で夕飯を食べることにあるのではないかと思いますが、本当によいお店でした。すばらしかったのでここに情報を書いておきます。
八丈島郷土料理「梁山泊」
TEL:04996-2-0631
満月にほど近い輝く月を見ながら、いい気分で宿へ歩いて帰る二人。
うーん、これは幸せ。本当にしあわせ。
翌朝はガッツリ朝ごはんを食べ、大漁のトビウオでいっぱいだという噂の底土港へ。多少寝坊した私たちが見たものは、それらの出荷などがすべて終わったのどかな港の風景でした。目に映る花々、空、山がすべてまぶしく、とても気持ちのいい朝。あとで聞いたのですが、島でこんなに晴れる日って珍しいのですってね。旅先で天気がいいと本当に幸せな気持ちになりますねー。晴れ女のアンナさんに感謝。そして、心優しき島の人たちに感謝。
怒涛の八丈島珍道中編その5−駆け足八丈一周観光編へと続く!
え、着物の話は? 今回は見送りました!
だって八丈島は近いから黄八丈はいつでも買える(だろう)し!
2005.5.1